穴あき盤

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このLPレコードは、高校生の時に、名古屋の名曲堂というレコード屋で入手したもの。
よく見ると、ジャケットの右下に、直径6ミリほどの穴が開いているのがわかる。

その昔、何かの都合、新録音が発売になって廃盤まじかになったとか、発売元が変更された、売れなくて在庫がたくさんあるなどの理由で、商品価値が無くなり定価では売れないと判断したLPには、丸い穴か、もしくはレコードジャケットの四隅のどこかに切れ目を入れて販売するレコードが存在した。

カラヤンとウイーンフィルのベートーヴェン7番の交響曲が収録された、このレコードが不思議なのは、発売元がヴィクターであることで、リヴィングステレオという、今でもその愛好者は多いと思われる優秀な録音が多いシリーズだが、音源はDECCAの所有であり、このころ・・1950年代後期から1960年代前期に録音された、一連のカラヤンとウイーンフィルの蜜月時代の産物である。

ロンドンレコードからも発売されたと思うのだが、その頃はあまり珍しくなかったが、カラヤンのジャケットにしては、非常に地味な、ベルナルド・ベロット の「シェーンブルン宮殿」の絵画。

このレコードを発見した時の喜びと言ったら、それはもう凄いことで、廉価盤には絶対にならない、あの憧れのカラヤンのレコードが、格安で手に入るのだから。

2000円の定価に対し、確か1500円だったと思うが、当時の廉価盤は1200円で、1000円盤が出てくるのはもう少し後のことだから、廉価盤とそうは変わらないとばかりに、持ち金をはたいて購入したものだ。

このレコードがなぜ穴あき盤になって、安売りされるようになったのかはわからないが、面白い特徴を持っていて、レコードは通常、盤面が黒色のものが主流で、ほとんどがそうだったが、東芝エンジェルレコードの中には、赤く透明感あるものが存在した。

そしてごくたまに、このレコードがそうだったが、表面的には黒色だが、透かして見ると、薄い青緑色であることがわかるものがあった。

静電気防止、防塵対策レコードだから、などという話もあったが、真相は不明。

赤色は音があまり良くなかったが、この色のレコードは、総じて音の良いものが多かったのは、偶然であろうか、それともビニールの材質によるところが原因だろうか。

未だにわからないのだが、とにかくこのカラヤンとウイーンフィルのレコードの録音は素晴らしく、ずいぶん後にDECCAオリジナルマスターリングのCDを購入し、聴いてみたのだが、どうしてもこのLPの音に負けていることを認識せざるを得ないほど、このLPは実に音がよいのである。

経験では、オリジナル音源を持つところから譲り受け、そこでレコード化した場合、オリジナルの音と比べ、多少悪くなることが多い。

DECCAと多分(RCA)ヴィクターがどのような関係課は知る由もないが、音源の貸し借りはあっただろうから、このレコードが登場した背景は何かしらあったのだろう。

ジャケットの右下にこのLPの特徴でもある「スーパーレコード」についての説明を発見した。
それによると、新材料ビニールを使用し
埃が付かない処理がしてあること。
静電気が発生しない処理・・従来が数千ボルトなのに比べ数ボルトの帯電でしかない。
音が非常に良い、音の溝が正確に作れるから、分離がよく高音まで再生可能。
丈夫で長持ちする。雑音の発生や盤の損傷が極めて少ない。

音は確かに良いから、コノレコード材料の盤質がもたらしたものというのは、確かなことであるようだ。それにスクラッチノイズは今でも半世紀以上たった今でもほとんどない。

後年になると、コストセーブなのか、こういう材質の盤は見られなくなり、おまけに厚さ重さも約3分の2ほど、ペラペラになってしまった。

せっかくオーディオ装置と録音技術が達発進歩したのに、肝心のレコード盤質が後退したのでは、良い音は聞こえてこない。

70年代中期以降のレコードに、音のよくないものが多かったのは、そのこともが理由の1つであろう。

カラヤンの演奏は
「高級ビロードの服を着た紳士」という表現で、掲示板に書き込んだことがあるぐらい、お洒落で、滑らかによく歌う、それでいて随所に「粋」を感じさせる、山間から内陸部へとスムーズに流れる清流のように、至極爽やかな演奏だ。

カラヤンは後に、いくつも7番の交響曲を録音しているが、小生が一番好きなのがこの演奏だ。

かつて、オーディオと音楽好きの友人が来た時に、このレコードを、オルトフォンのMC30とQUAD、ESL-63で鳴らしたが、彼は飛び上がらんばかりにびっくりして帰って行ったことがあった。

彼が持ってきたのが、偶然にも70年代の全集であったが、それを聴くこともしなかったのは、いかにこのLPの音がよかったかを表すものである。

廉価盤やこのような穴あき盤あるいはカット盤の中には、大変な優れものがあることが少なくないから、当時も今もアナロウレコード再生はやめられないのである。

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by noanoa1970 | 2011-03-04 19:03 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(4)

Commented by drac-ob at 2011-03-04 21:58 x
カットアウト盤ですね。学生時代は大変お世話になりました(笑)。75年の夏休みに帰省したらデパートの特売コーナーに輸入盤のカットアウトが置いてあって、どうせ碌なものはないだろうと物色していたら二ルソンの「ランディ・ニューマンを歌う」があってクリビツテンギョウ。大急ぎで購入しました。それ以来、どんな小さなレコードコーナーでも侮らずきちんと調べる癖がつきました。
Commented by noanoa1970 at 2011-03-05 07:25
drac-obさん、おはようござ尾ます。

正確にはカットアウト盤というのですか。
カット盤は、いかにもという感じでしたが、穴あき盤はチョット見はそれと分からないので、卑屈にならずに済んだというバカな覚えもありました。ニルソンのベストアルバムがカット盤とは凄いことです。掘り出し物が相当あったのではないかと思いますが、カット盤や穴あき盤はいったいどこのだれがそうしていたのでしょうか。販売店なのか、メーカーなのか、それとも違う第3者なのか、いまだによくわかりません。
Commented by 田舎のハインリヒ at 2011-03-05 09:18 x
右下に穴・・・・で思い出し、わたくしも一枚所有していました。穴といっても錐で突いたような痕があるだけ。きちんと開けてないですね。
シューベルトの「鱒」、演奏はヴァリリSQ、パウル・パドゥラ=スコダのピアノです。
録音年の記載もない Music Guild 盤ですが、ジャケットの渓流写真が気に入ってしまい、手放せません。
Commented by noanoa1970 at 2011-03-05 11:17
田舎のハインリヒ さま
アナの形状はいろいろあるようですね。
小生のは真円で、パンチで開けた穴のようです。錐で突いたような小ささですと、よくよく見なければわからないですね。それにしても誰がどこで開けるのでしょう。
バリリSQ+ウイーンコンツェルトハウスとスコダの演奏は「鱒」の名演といっていいのではないでしょうか。1950年モノラル録音と1958年ステレオ録音があるようです。ステレオ盤はバリリSQが主体のようですから、お持ちのは1958年録音ではないでしょうか。良いものを手に入れられましたね。