アメリカの四重奏団による「アメリカ」

d0063263_10582252.jpg
レコード棚からピックアップしておいた物の1つが、ウエストミンスター盤。

キングレコード発売の、ウエストミンスターコレクターシリーズの室内楽編、ジャケットがペラペラの、これも廉価盤である。

このシリーズでは、ウイーンコンツェルトハウスSQの録音が数多くあった。

小生はコロムビア盤で、かれらの有名曲を聴くことができたから、あまりこのシリーズは手持ちがないが、その中の1枚がブラームスのピアノ五重奏、これはイエルク・デムスがピアノを弾いている。

そしてB面2曲目から収録されたのが、ドヴォルザークの「アメリカ」。

小生は実のところこのレコードを聴くことが殆どなかった、というのはその頃は、ブラームスが苦手だったからだ。

したがって、B面の2曲目という、レコードでは針を落とすのが面倒な個所から始まる「アメリカ」も殆ど聴くことが無かった。

改めて小さな文字を確認すると、ウイーンコンツェルトハウスSQの演奏とばかり思い込んでいた「アメリカ」が、そうではなく、CURTIS(カーティス)SQの演奏だったことが分かった。

以下の動画は、カーチスのメンバー、チェロのオルランド・コールのトリビュート
かなり珍しいと思われるが、ここからも情報が取得できた。


四重奏団は1930年代から活躍してきた。
四重奏団の大本、カーティス音楽学校は、フィラデルフィア管弦楽団の水準を満たすような楽団員の養成機関であった。
この四重奏団のメンバーには、チェロのオルランド・コールがいた。
チェロのオルランド・コールは、リン・ハレルの師匠だった。
おそらく彼はカーーティス音楽学校出身者か教授であっただろう。
カーティス四重奏団のメンバーの多くは、フィラデルフィア管弦楽団のメンバーによって構成されたのかもしれない。

初めて聴くことになる四重奏団ということもあって、情報を得るべく検索したのだが、いかにも情報に乏しい四重奏団で、アメリカの四重奏団であること他、ほんの少しの情報しか得る事が出来なかった。

それならまずは聴くべし、そのほうが文字情報に惑わされないからよいのではと、聴いてみることにした。

盤の状態は、40年以上たっているにもかかわらず、かなり良い状態で、これはほとんど針を通してなかったためだろう。

しかし聞こえてきた音は、さすがに古く50年代後半か60年代初めごろに思える。

ジャケットにはステレオ録音とあるが、疑似ステレオかも知れない。

肝心の演奏はというと・・・

ドヴォルザーク臭をまったくか案じない、そしてかなり即物的な印象で、ジョージ・セルの指揮ぶりに類似するようなところが、散見される。

1楽章1主題のヴィオラの歌いまわしも、シュリンプカクテルの前菜のように、よく噛んでようやくソースとクルマエビの味がMIXし、口の中がシナジーを得るように、この表現は何度聞いても、多分あ飽きることはない。
ほんのり甘いところもあるし辛いところもあるが、まったく刺激的ではない。

じわじわと口の中に旨味が広がってきて、ついおいしい白ワインがほしくなり、飲み進むにつれ、メインディッシュに期待を弾ませるように、次の展開がとても気になる。

四重奏団と何らかの関わりが濃いと思われる、カーティス音楽院情報によると、1933年から1938年まで、フリッツ・ライナーが指揮科の教授をつとめたとある。

また代表的卒業者には
サミュエル・バーバー
ジャン・カルロ・メノッティ
ホルヘ・ボレット
レナード・バーンスタイン
アンナ・モッフォ
ピーター・ゼルキン
リチャード・グード
ヒラリー・ハーン
ラン・ラン

音楽院はかなり厳格で入学が難しいらしく、その上年齢制限があるので、志願者はかなりのスキルがないと入学できないと言われる。

演奏スタイルを、音楽院の教育方針によるところと、一概に規定することはできないが、トスカニーニやその貢献者ラインスドルフ、ドホナーニ、そしてセルなどによる「ノイエザッハリッヒカイト」に基づく演奏法は、ある時期アメリカのクラシック界を一斉風靡したから、カーティス四重奏団もその影響を受けているのかもしれない。

他の音源を聴いてみないと断定的なことは言いにくいが、この「アメリカ」を聴く限りは、相当即物的に聴こえるが、しかし、19世紀の後期ロマン派的要素も引き摺っているから面白い。
・・・シンコペにポルタメントを密やかに使用するところにそれが見える。

ごく最近の四重奏団の演奏には、ザッハリッヒなものが多いが、カーティス四重奏団の「アメリカ」はその先駆的演奏と思う。

偶然発見した音源だが、復刻されていないようだから、今のところは貴重盤である。

[PR]

by noanoa1970 | 2011-03-02 10:06 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)