カルメナバッハ

バッハは60歳を過ぎてからたっぷり聴く。
若い時にはそう思っていたのだが、いまだバッハを聴きこんでいない。

大げさに言えば、手当たり次第にバッハを聴き込むことは、神の領域に土足で上がりこむようなもの。

そんな風に思っていた。

しかしもうとっくに還暦を過ぎ、残りの命のほうが少なくなってきた今、ここらでバッハを自分なりに極めなくてはと思うのだが、どうも足が鈍るのである。

今日は、今まで聴いてきたほとんど有名曲の中から、あまりい厳しくないものをと、レコード棚から探したが、見つからなかった。

探し物は、クルト・レーデルとミュンヘン・プロ・アルテ室内合奏団の管弦楽組曲2番であったが、いくら探しても運悪く見つからなかった。

最近聴きたいと思うCDやレコードは、必ずといって探せないことがよくある。
探しているものだけが、何度探しても見つからないのだ。

この現象はここの所数回続けて起こっているので、不思議なことだと思うようになった。
以前ではそのような現象は、ほとんど起こった例しがなかったからである。

もっとも整理整頓が悪いのだから、当たり前といえば当たり前なのだが、それでもお目当ての音盤だけが見つからないのは、何かの因果関係があるようで、気持ちのいいものではない。

それでも不幸中の幸で、長い間聴かれずに棚に眠っていて、忘れ去られようとしている音盤、それが昔よく聴いた思い出あるものが見つかることがある。

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探していたレコードと同じジャケットの記憶から、てっきりそうだと思って取り出したのは、管弦楽組曲ではなく、同じ演奏家によるバッハのオムニバス盤であった。
3番からアリア・・俗にG線上のアリアと呼ばれるものだけが収録されている。
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それでかわりにこのアルバムを聴いたが、どうしても組曲2番の印象が頭から離れない。
聴き直しができてないが、組曲2番の印象について、思うままに書いてみた。

お目当ての組曲が、この演奏家たちでなぜ聴きたかったかといえば、それはレーデルのフルートである。

Ouverture、Rondeau、Sarabande 、bourrée、Menuet、 Polonaise、Badinerie と7曲すべてフルートが活躍するこの曲。

古い舞曲をアレンジして作られていて、不思議なことは、短調でできているにもかかわらず、長調のように聴こえること。

意まではピリオドアプローチが、バロック音楽演奏の主流のような観を呈しているが、レーデルが盛んにレコーディングした50年代60年代では、まだその兆しが見えてはていなく、したがってモダン楽器による演奏だ。

フルートはもちろんバロックフルーテではなく、レーデルは金属でできたモダンフルートを使用している。

ピアノ弾き振りは、ある程度見ることができるが、フルートの吹き振りは、相当珍しい。

自分バッハの解釈と指揮をするのだから、レ^デルの吹き方は、今までのフルート奏者のそれとはだいぶ異なっていて、小生はそのあたりが気に入っているのだ。

「装飾音符」を大量に入れ込んだ演奏…一言でいえばそういうことになる。

バッハにそういった装飾音符を入れて、華美になるのを嫌う人もたくさんいて、デーレーデルのバッハは軽い、そういう方もいなくはないであろう。

しかしいくら神聖極まりないバッハとはいえ、世俗曲の、それにおそらく
発祥は、庶民の・・・たとえばアイルランドの古代舞曲が原型である向きもあるこの組曲が厳しいものでもないであろう。

短調のようで長調に聴こえ、そして神聖的な響きもある・・・バッハは計算ずくでそうしたに違いない。
これは仮説にもならないことだが、すなわち、バッハにおいては、いずれの音楽においても、聖と俗が共存しているのではないのだろうか。

今後多くのバッハ作品を聴く上での、小生のポイントとしてみたい。

カルメノバッハというタイトルにしたが、軽いというのは決してレーデルの演奏を、並み居るバッハ演奏と比較して、1段低いといっているのではなく、このようなバッハ解釈も道理であるし、レーデルが紡ぎ出す音楽そのものを聴けば、アイルランド発祥の「コントラダンス」のように、ある集まりで皆が揃ってダンスを踊る時や、休憩時の談笑や飲食を楽しむためのBGMとしても相応しいと思えるようなバッハであることがわかる。

聴いていて楽しいバッハが、そうざらにあるわけではないが、レーデルの組曲2番は、それに該当するように思う。

少し無理すれば何とか購入できた廉価盤の中には、レアかつ非常に素晴らしい鴛鴦が収録されているものが、少なくなかったが、このLPもその類に入れてよいだろう。

今なら、ピリオド系の演奏家の中には、装飾音符を入れ込んだ演奏を見かけることもあるが、かなり前からレーデルがそのような演奏方法を取り入れた背景には、モーツァルティウム音楽院での研究の成果が反映されているのではないだろうか。

軽快で楽しいバッハ。
そんな演奏の存在を、少しは認めてあげようではありませんか。
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by noanoa1970 | 2011-02-23 17:38 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(6)

Commented by HABABI at 2011-02-23 22:54 x
sawyerさん、こんばんは

レーデルのLPは「音楽の捧げもの」(新旧2種類)と「ブランデンブルク協奏曲」を持っています。このうち、楽しいバッハという意味では、後者でしょうが、レーデルのはかなり大目の残響を伴った録音で古さを感じさせます。しかし、お気に入りのバルヒェットのヴァイオリンから独特の肌触り・手応えを持つ音が聴かれ、それだけでも価値があると思います。
バッハの音楽からは、やはり独特の精神性を感じ、自分の場合は、50歳になってから多く聴き始めて、だいぶ馴染んだと思います。今は、バッハのいろいろな曲を聴いています。HABABI
Commented by noanoa1970 at 2011-02-24 05:35
HABABI さんおはようございます
「音楽の捧げもの」それもレーデルだけで新旧2種類お持ちとはすごいですね。小生はわずか2種類しか所有していません。この曲小生はシェーンベルクの12音技法の曲を彷彿するものがあるようにいつも聴いています。不思議な感触の曲だと思います。それにしても、組曲2番でのレーデルのフルートは、洒脱っぽさで満ち満ちています。
一見モーツァルトでも聴いているような錯覚に陥ることがあります。ブランデンブルグもどこかに離散したようで、今大手CDショップのカタログを検索したら、残念なことに「組曲」はありませんでした。しかし捧げものとブランデンブルグがありCDでも廉価となっていますので、入手候補にしたいと思います。驚きはスロヴァキアフィルと「新世界」を録音していることで、初めて知りましたが、興味深いです。
録音が少ないのか、あまり評価されてないのか・・・残された音盤が少なすぎるように思います。
Commented by こぶちゃん at 2011-02-24 11:07 x
バッハは19歳から熱心に聴いていますが、未だに新発見が目白押しの私にとっては最高の作曲家です。
厳しい音楽が多く、聴き辛い曲は宗教曲やオルガン曲に集中する他、フーガの技法、音楽の捧げ物もその代表作かもしれません。
レーデルはフィリップスとエラートに録音を遺してますが、前者の方が評価は高いようですね。
私はブランデンは少なくとも10種類、管弦楽組曲も10種近くは聴いていますが、楽しい感じの演奏でお勧めは前者ではリステンパルト、レッパードです。ただ、最近最も好んで聴くのはエイジ・オブ・エンライトンメントです。何しろ巧いです。
後者はジョルディ・サヴァールでしょうか?意外なほど名盤が少ないのが管弦楽組曲かもしれません。
Commented by noanoa1970 at 2011-02-24 12:41
こぶちゃんさん、コメントありがとうございます。
ジョルディ・サヴァール・・小生は当然のごとく聴いてはいませんが、多分ピリオド系の演奏者なのでしょう。食わず嫌い的なことは承知なのですが、どうも性に合わないみたいです。バロックフルーテも、2番の洒脱さの解釈には、少し遠いトーンがします。エイジ・オブ・エンライトンメントは依然BSでチラ見しただけですが、最近脚光を浴びているようで、ラトル初め、かなり有名な指揮者が振っていますね。以前ご教示いただいた、マッケラスもシューベルトのグレイトで共演しているし・・・
それでもピリオド系はどうしても肌に合わないのですよ。
たまに聴くには衝撃的ですが、何度も繰り返しては聴けません。組曲、レーデル以外ではというと、ミュンヒンガーになってしまいます。ランパルが曲者ですが。
Commented by こぶちゃん at 2011-03-06 01:16 x
お察しの通り、サヴァールはかつてエスペリオンXXを率いたバロック・チェロのスペシャリスト。
独EMIのルネッサンス~バロックのシリーズReflexに録音を残す他、高音質録音で有名な仏Astreeにも録音しています。

私も基本ピリオド系という評価はしません。寧ろ苦手でしたし…
リステンパルトとレッパードは基本ピリオド系ではありません。
余りお聴きになっていなければ、ミュンヒンガーよりも驚きを与えてくれると思いますよ。
Commented by noanoa1970 at 2011-03-06 03:53
こぶちゃんさん、ありがとうございおます。
レーデルの組曲が見つかったので改めて聞きました。小生は他の演奏をあまり聞いてないにもかかわらず、やはりこれが性に合っている、そうつくづく感じました。バッハに関しては他の作曲家の作品のように、沢山の演奏で聞くというまでに至ってないのは、修業が足りないと思います。しかし今後の楽しみということで・・・
バッハの世界だけでも、相当に多くの時間が必要だろうと思うので、今まで聴いてきたものを整理の上、未聴の領域にチャレンジして行こうと思ってます。時々ご教示願います。