生き残れるか、日本のオーケストラ

思い出すのは、今から約10年ほど前のこと。
その頃はネット上で「掲示板」が賑わっていた時代であった。

それで小生は、クラシック音楽に関して、かなり造詣が深いと思しき人たちが集まる、今は無き「クラシック招き猫」に参加した。

演奏会感想、CD批評、演奏比較、指揮者など演奏家賛、音楽史的考察、楽曲分析的考察、などなど、多方面にわたる投稿があり、またそれに対するコメントおよびリプライが返され、中には議論が長く続きスレッドが右に長く長く伸びることもあった。

時には議論が白熱し、それが高じていつの間にか喧嘩に発展し、誰かが仲裁をするといったこともあったが、今となってはみな懐かしい。

そんな投稿に、大阪はオーケストラの乱立で、経営が破たんするらしいが、何とかならぬものか・・・というスレッドが立った。
大阪センチュリー響の存廃が叫ばれ始めたのが契機であったと記憶する。

不況で民間大手会社の寄付や、行政からの寄付が縮減傾向にあり、チケットの売れ行きもままならない、それが経営を圧迫しているのが要因であるが、何とかオーケストラを存続させる方法はないかというのが、スレッドの主旨であった。

それに対しさまざまな意見が寄せられた。

今までのオーケストラは、おおむね他人頼りで、メンバーも音楽だけをやっていたい・・・などと考える人が多い、それが原因ではないか。

金食い虫であるがゆえに、外部からの寄付の依存度の高いオーケストラが、いざ不況仁なると途端に困るのは当たり前。

自営で経営ができないオケは、つぶれても仕方がない。

経済状態の回復の見込みがない現状であるが故、たとえオーケストラといえども、新しい経営をしなければいけないだろう。

まだまだ多くの意見が寄せられた記憶があるが、小生はこんな意見を述べた。

民間の会社は、常に新規顧客を獲得拡充して商品を拡販することに全力を挙げている。
ところがクラシック音楽の、そしてクラシックコンサート顧客の顔ぶれは、大体同じで新規が無いのではないか。

要するに顧客のパイを広げなくては、あのように多くのオーケストラが存在する狭い関西圏では、必然的に先細りとなる。

よってクラシック新規顧客の開拓こそが生き残る道なのではないか。

それには今までの伝統的なコンサートのやり方を見直して、顧客参加型にすることが必要。
オケのメンバー全員が営業マンとして、新規会員を獲得する目的で活動する。
常連の顧客・・会員からその友人知人などを紹介してもらうよう働きかける。

伝統的コンサートを脱却し、たとえば他の媒体とのコラボ・・・コンサート形式オペラのあらすじを落語で行う。

大規模ダンスパーティ食事と生演奏。
映画の劇伴を生演奏で。

演奏する音楽の面白話的トリビア解説。
学校などへのインブランチ無料コンサート。
定期的な大規模野外コンサートの実施。

要するに、クラシック音楽好きが参集する観客が多いこれまでのコンサートは、演目もそれなりに検討し実施することにして(自分たちが演奏したい新しい品目でよい)、一方新規顧客獲得のために、新しい市場・・・クラシック未体験者に対する仕掛けをすることこそ必要ではないか。

おおよそ以上のようなことを投稿したことを思い出した。

長くなったが、今朝の情報番組の中で、「コンサート開催のための新しい画期的な仕掛け」と紹介されたのを見て、10年前に議論したことを思い出したというわけだ。

関西フィルが、クラシック音楽界で初めて、新規顧客獲得目的で、今までクラシック音楽と無縁の人を対象にしたコンサートを企画したという。
従来よりかなり安い寄付金で会員を募い、会員には聴いてみたい音楽を、事前にリクエストしてもらい、その中から曲を選択し演奏する。
コンサートの中での指揮者疑似体験の実施などなど・・・・

新規顧客獲得目的のコンサートの新しいやり方として、以上のようなことを画期的というほうもいうほう、そして今頃ようやく実施するほうもするほう。

いかにオーケストラというものが、前時代的で芸術至上主義的な内容と形式のもとで、時代感覚がないまま活動してきたか、ということの表れであろう。

関西フィルのHPに以下のように記されてあった。
昨日2月2日にいずみホールにて開催された「ずっと大阪を、もっと元気に!コンサート」の公演を、NHKと読売テレビに取材していただきました。

この演奏会は、近畿大阪銀行様、いずみホール様、関西フィル、3者の共催で開催したもので、チケットを販売するのではなく、演奏会の趣旨に同意してくださる方に一口¥5,000を出資していただき、総数800口をコンサートの運営資金として募集するというもの。オーケストラ界では初めての試みとして注目していただきました


チッケット代ではなく、寄付金というところに新しい何かが期待されるが、目の前のコンサート実施のために資金を集めたということに他ならないし、寄付金で400万が集まったことはいいことだが、チケット代金を寄付金と言い換えただけのような気がしてならない。
肝心なことは、新規顧客獲得という目的の達成への道が開けたのか否かであろう。

相変わらずバックには、銀行という援助者の存在があるのが、これは長く継続可能ではないだろう。

単発のコンサートを実施するために寄付者を募っていくのは、ほんの小さな目的にしか過ぎない。
寄付してくれた人が、今後リピーターとなって、長く応援してくれるのか、それが根本の問題である。

得られた情報での判断だが、小生は、まだまだ甘いところが沢山あるように感じる。
実際の行動内容が描かれてないから、彼らオケのメンバーの力が働いたのか、そうではなく、今までと変わらない要素があっての結果なのではないだろうか…そんな疑いもわいてくる。

オーケストラが生き残っていくためには、オーケストラのことが分かったうえで、マーケティングの能力に長けた人材が必要ではないだろうか。

音楽だけやってきたオケのメンバー全員が、これからは営業マン・・・そんな体質改善が必要ではないだろうか。

良い音楽は音楽だけをやっていても得られない…そんな気がする今日この頃である。

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by noanoa1970 | 2011-02-05 11:23 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)