ブラームス弦楽六重奏曲追加視聴

今週は室内楽週間となった感があって、ヤナーチェクSQのモーツァルト、ハイドン、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス、ドヴォルザーク、スメタナ、ヤナーチェクと聴いてきた。

特に、スメタナSQとヤナーチェクSQがユニットを組んだ、メンデルスゾーンの八重奏曲の素晴らしさに両SQの底力を再認識し、あまり成功例の多くない巨匠同士のユニットの例外的事例に加えさせてもらうことにした。

実は、個人で活躍する演奏家が集まった臨時ユニットが、個人個人はピカ1の実力者にも関わらず、その演奏がそれほど心に響いてこない例を、(偶然かもしれないが)、かなり知っているので、そういう観点から、ブラームスの弦楽六重奏曲演奏で、確認してみようという気になった。

弦楽六重奏は通常、弦楽四重奏にヴィオラとチェロを加えた編成である。
ブラームスは、弦楽四重奏では物足らずに、中低音部補強のためか、2つの楽器を追加したのだろうと思われる。

事実そのことによって、この曲はなお一層の重みと重圧さによる安定感を増している。
言い換えれば、中低域を充実した安定感があってこそ、高い音域を受け持つヴァイオリンの最高域をうまく使うことができるというわけで、ブラームスはヴァイオリンの最高域の少しキツく荒れ気味なボウイングの音色で、表現したい特別な思いがあったのではないか。

しかし、小生はブラームスがこのことだけにこだわって、中低弦を追加した六重奏曲を作ったわけでなく、弦楽四重奏では、「解る人だけに解ってくれレばよい」といわんばかりの、本当に言いたいことを包み隠す存在となり易いわき役、ヴィオラ、チェロの中低弦パート其々に、もう少し言わせてみたい…そんな欲求の表れではないかと推測することがある。

2楽章の有名なメロディを、ヴィオラに語らせているのは、画期的な試みと言ってよいのではないだろうか。

重圧な響きと内声部を大事にしたブラームスの総合力は、のちに、4つの交響曲で開花すると思うのだが、それは裏の音あるいは内声部こそが、ブラームスの生命線でなおかつ彼の音楽的到達点でもある。

そして、ブラームスが、なぜ弦楽六重奏という演奏形式を採用し、もっと分厚い響きと和声が得られる弦楽合奏にしなかったのか、という疑問が膨らむが、その答えは、きっと「個」の問題に帰結するのではないだろうか。

気になって弦楽合奏版の録音の有無を確認すると、数点存在しているようだが、個としての各パートの音と、それらが集合する和声を聴きとるには、このスタイルのほうが具体的に表現できそうだから、合奏版にはあまり触手は動かない。

それにブラームスの言いたかったものを、弦楽合奏で表現するには、かなり優秀な編曲の手腕が求められる。
よって、その辺の演奏家や指揮者の編曲では、相当困難なことが推測される。
たとえば、シェーンベルクなどの作曲家の手になるものがあれば話は別だが。

やはりブラームスは本来、「集団で物申す」的な音楽は似合わない。
このことを発展させて言えば、「ブラームスの音楽的本質は室内楽にあり」…ということになる。

d0063263_1520914.jpg
今までほとんど聴かずにいたのだが、サンプリング数は多いほど良いから、ブリリアントの室内楽BOXに入っている、アルバーニSQの演奏を聴き、追加で取り上げることにした。

小生実は、アルバーニSQの演奏を聴くのは、このブラームスでが初のこと。
名前も氏素性も、まして経歴などまったく知らないSQだが、そのことがかえって、演奏の評価や感想に及ぼす影響が少なく、演奏だけを聴いて純粋に判断することになるから、より信憑性があると勝手に思うことにして・・・聴いてみた。

小生は、演奏に関することを書きのべる時には、必ずそれ以前に数回、場合によっては、最低でも5回以上聴いているものから選択することにしている。

そしてこれも大事なことなのだが、ついで聴きは絶対にしない。
そのような聴き方での感想は、非常にいい加減なことが多すぎる、そういう経験をたくさん持つからだ。

音響装置にしても、たとえばPCとかポータブルオーディオ+イヤフォンの類は使用せず、メインオーディオ装置で聴くようにしている。

プラス評価を記述するときは問題はないが、特にマイナス評価の場合は、自分自身がシビアに音楽と対峙しなくては、まともなことなどいえるはずがない。

じっくり聴いたとしても、的を得た感想評価を、的を得た言葉で説明するのは非常に難しいのだから。

なかなかアルバーニSQの演奏の感想に、たどり着けなかったが、これから始めることにする。

まずはこのSQの技術的見地から見ると、かなり鋭い表現が、テクニックに裏打ちされているようで、技術レベルは相当高いとみた。

アインザッツや音のつなぎ目など、ずれるとすぐにわかるようなところも、息が合っており破たんがない。

テンポはかなり高速で、自分たちSQが表現したいことを演じているというよりは、インテンポで楽譜原理主義的な基本演奏スタイルのように聞こえた。
ベルリンよりも、よりザッハリッヒではないだろうか。

ただし、ところどころに微弱なスタッカート気味のアクセントをつけていることが、他の演奏と比較して顕著であった。

1978年録音だから、今のようにそうはいい環境下の録音ではないと思うのだが、中低弦の柔らかさと、ヴァイオリンの最高音域の音色も美しい。

ザッハリヒな演奏スタイルだから当然だが、音楽は早めのテンポで突き進み、チェックポイントの1つ、2楽章では、感情移入といった表現法を排除することで、非ロマン主義的な表現となっていて、あっさりと過ぎて次の楽章へ。

ただし彼等の演奏が、そっけないかといえば、決してそういうわけではなく、非常に少ないがここぞという強調ポイントでは、激しくアッチェレランドやクレッシェンドしていて、時には劇的な表現となることがある。

CDは1番と2番の六重奏が入っているが、このSQは2番の演奏のほうで、よりその力を発揮しているようだ。

また上の記述で、中低音部を充実させることで、逆に高音部が際立つと書いたが、その例として2番1楽章で第2ヴァイオリンが奏でる第2主題、いわゆる「アガーテ音型」を、ブラームスが強調しているように聴こえることを挙げておくことにする。

アルバーニSQ、ほかの演奏を一切聞いてないので、どうかと思うが、ブラームスを聴く限りは、新進気鋭の若手のメンバーが集まったSQのような香りがする。

70年代に活躍したとすれば、その当時としてはかなり異色のSQだったかもしれない。
しかしこのころ活躍し始めた四重奏団として、以下のユニットを知っているが、アルバーニは見つからなかった。

彼等は、それまでのユニットとは少し毛色の違う、モダンなSQとして当時評判となったものばかりである。

70年代を中心にこれほどまでの、新しい音楽表現スタイルを持つSQの出現は、決して偶然でなく、たとえば音大の教育方針の変化などの大きな力が働き、そして受け入れる側も、新しい音楽スタイルを強く求めていったことにあるのではないだろうか。

音大出身者がユニットを組んで、ハードロックからプログレへと変化していく様子に近いのでは、と推測するのだが確証はない。

このあたりロックのスペシャリストdracーobさんに、ご教示いただければと思うのだが・・・・

アルバンベルク弦楽四重奏団、イタリア弦楽四重奏団、エマーソン弦楽四重奏団、クロノス・カルテット、タカーチ弦楽四重奏団、東京クヮルテット、ラサール弦楽四重奏団、ブダペスト弦楽四重奏団
ちなみに、上にあげたユニット、従来の演奏スタイルと一線を画す存在だったが、中で最も異色の演奏スタイルとして、評判になったハーゲン弦楽四重奏団は1980年代の結成である。

アルバーニもこういう、新即物主義的なものと、新ロマン主義的の混合物を、背景として背負っていたのかもしれない。

期待が薄かっただけに、軽い疲労はあるが、かなりの充実感を味わえたし、新発見した気分が、とても気持ちがよい。

後述記
アルバーニカルテットを聴くのは初めてと行ってきたが、実はとんでもない思い違いで、小生はこの演奏団体のボロディン2番&チャイコフスキー1番の四重奏をかなり頻繁に聴いてきた。
アルベルニSQという呼び名をつかっていたので、アルバーニとアルベルニが同一のSQと思わなかったのが真相だ。

後に訂正の記事をかいたがここでも訂正させていただくことにした。
[PR]

by noanoa1970 | 2011-01-29 15:20 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(4)

Commented by HABABI at 2011-01-30 20:56 x
saywerさん、こんばんは

我が家にも同じブラームスのセットがあり、アルバーニ弦楽四重奏団の弦楽六重奏曲の第1番を聴きました。少し大き目の音で聴くと、よく纏まった演奏の中で表現しようとしているものが聴き取りやすい様に思いました。イギリスの団体の様で、ベルリンの団体の響きとは異なるでしょうが、これもいい響きなのではないかと思いました。
Commented by noanoa1970 at 2011-01-31 06:17
HABABI さんおはようございます
ブリリアントのブラームス室内楽BOXには、少ないですが、かなりの演奏が入っていることがあります。ブランディスSQ+ヴィオラの演奏での五重奏曲を昨夜聴きましたが、あたりでした。期待のカール・ライスター、初聴きでは今1で、その後聴いておりませんでしたので、再度入念に聴いてみようと思います。何か良い点が見つかるやもしれません。
Commented by HABABI at 2011-01-31 21:35 x
sawyerさん、こんばんは

ブランディスSQは私も気に行っています。いい団体ですね。
このセットの中で3曲のピアノトリオを演奏している団体はアメリカの団体で、チェロは女性です。28年前、アメリカ留学中に学校のあったナッシュヴィルでの彼らの演奏会に行き、演奏終了後、彼らが録音したメンデルスゾーンのLPを持って行って三人のサインをもらいました。
Commented by noanoa1970 at 2011-02-02 05:47
HABABI さん
お早うございます。
特に2番が良いですね。
小生はコノユニットのことは、まったく知らなくて、もちろん初聴きだったのですが、調べてみたら、ベルリンフィルのピックアップメンバーらしいです。ベルリンフィル八重奏団にしても、このユニットにしても、BPOは真に実力を持つオケということの証明のようです。ライスターも、ソナタとクラ5を聴きましたが、以前の印象とは異なり、悪くありません。ピアノトリオは以前、それも1番しか聞いてませんので、これからジックリ聴こうと思います。