ショパンとプレイエル・・・ヴィンテージピアノが語るもの

昨夜見たTV番組「ピアノの詩人ショパンのミステリー」には、ヴィンテージピアノが登場した。

その1つは、「スタインウエイ」。
現在のように、「Steinway & Sons」というロゴマークのピアノと違い、写真のように、腕木と呼ばれる鍵盤両端の部分の角が丸いから、ハンブルグスタインウェイのヴィンテージモデルであろう。

かなり古いものらしい様子がうかがえる。
そして音は、いわゆるスタインウエイの音色と、趣を異にしていて、もう少し丸い音のように聞こえた。

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放送では、仲道郁代さんが、このスタインウエイを使用して、室内楽バックのショパンのピアノ協奏曲を弾いていた。
室内楽バックの演奏もなかなかのものだ、というより、この方が似合っているようにも思えるほど。

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もうひとつは、「プレイエル」のヴィンテージモデル。
ショパンが使用したモデルと同じものが発見され、プレイエル社で修理復刻されたそうだ。
出現したのは、1843年製のピアノで、「ピアノフォルテ」として、最近では、このようなヴィンテージモデルによる演奏録音も少なくないようだ。

仲道郁代さんは、最初は強打するとピアノが壊れるかもしれないことを心配している様子だったが、担当技術者の了解のもとで、思いっきりのたけで、ショパンを弾いた。

そしてとても面白いことを教示してくれた。
其れは、ショパンの楽譜に見る、指使い・・・運指指示と、ペダルのオン・オフ指示についてであった。

それによると、ショパンは、5本の指のそれぞれの特徴・・・多分弱から強の指圧の違いに応じた運指指示・・・もっと簡単な指使いがあるのに、わざわざ難しい指を使わせることや、離れた違う音をたった1本の指・・・この指の音圧が欲しかったのか・・・で弾かせる指示をしていることなど・・・によって、より深い音鮮の再現を試みた、そしてそのことを支えたのが、プレイエルのピアノで、特にペダルを踏みっぱなしても、そして強音でも和音が濁らない特徴を持つという。

また、ペダルのオン・オフの中間点が段階的リニアに演奏中に調整可能なので、非常に細かいニュアンスが出せるという。

近代ピアノを使用した演奏でときどき見かける、ビブラートをかけるように、鍵盤を押しながら左右に細かく動かす処理も、きっと表情を豊かにするための技術だと思うが、残念なことに、1000人も2000人も収容するコンサートホールでは、その効果が出ているとは思えない。

プレイエルのピアノは、200人未満の小ホールでの演奏に適していたというから、細かいニュアンスが引き出せる、プレイエルのピアノは表現力豊かな力を発揮したのだろう。

ショパンの意図はプレイエルのピアノで一層発揮されたといっても、過言ではないということになる。

プレイエルヴィンテージモデルのショパンの音色は、ココで聞ける。

小生はかねてから、ピリオド楽器によるピリオド奏法には、バロック以前の音楽は別として、あまり好感を持っていなかった。

ベートーヴェンやシューベルトのピアノソナタをピリオドピアノで演奏したものを聞くと、非常に味気なく思っていたのだが、今回この放送から教えられた、「作曲家と楽器の関係の根深さ」・・・特に、ほとんどがピアノ作品で、しかも自らがピアニストでもあったショパンの曲を、ショパンが使用した楽器によって演奏されたものを聴くことは、近代ピアノで聴くのとは違う、何か新しい発見がありそうである。

仲道郁代さんは、プレイエルヴィンテージモデルを使用したショパンコンサートを開催したようだ。
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by noanoa1970 | 2010-07-04 10:10 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(6)

Commented by こぶちゃん at 2010-07-04 13:18 x
私もこの番組少し観ました。
音程が少しずれている?=フォルテピアノ?と思いましたが、やはりそうだったのですね。
素晴らしい楽器ですし、かつてDecca系のオワゾリール・レーベルでマルコム・ビンズが作曲年代毎に楽器を変えていまいたが、あっちはスゴイ音程が狂っていましたから、随分と向上した楽器だったのでしょう。
Commented by micarin at 2010-07-04 13:52 x
>ベートーヴェンやシューベルトのピアノソナタをピリオドピアノで演奏したものを聞くと、非常に味気なく思っていたのだが、今回この放送から教えられた、「作曲家と楽器の関係の御深さ」・・・特にショパンの場合、ほとんどがピアノ作品で、しかも自らがピアニストでもあったショパンの曲を、ショパンが使用した楽器によって演奏されたものを聴くことは、近代ピアノで聴くのとは違う、何か新しい発見がありそうである。

そうですね、その番組を拝見していませんがわかります。言いたいこと。ただ、実際に演奏してみると、もっと作者の意図がわかりますよ。ショパンはストイックな譜面に一見見えがちですが弾くとかなり演奏者の裁量にゆだねてくれる部分があります。逆に、聞き手の耳触りはつまらなくてもベートーベンはしっかりと演奏者に夢を与えてくれます。すっごい難しいですが、なんていうか…やりがいがあるんですよね。。。
いつかうまくなったら作り手と自分をつないでくれるようなピアノで演奏してみたいです。
Commented by noanoa1970 at 2010-07-04 16:50
micarin さんコメントありがとう。
そうですね。特にピアノやそのホj化のそろ楽器の場合は、演奏するとよくわかるというのは、事実だと思います。
所で、ショパンの自筆譜とのちに・・・たとえばパデレフスキーによって編集された版などでは、かなり違うところがあるようです。プレユードだったか、エチュードだったか忘れましたが、「松葉」が逆になっているということは、近代ピアノではどうもニュアンスが違うと思われたのか、ショパンのミスとして変更された可能性もあります。しかしピリオドピアノで弾くと、そうではないことが分かったと、仲道さんがおっしゃっておられました。ベートーヴェンのソナタは、「ソナタ形式」の集大成的存在で、主題の展開のさまが見事にわかります。ショパンのピアノとは、受け手の気持ちも相当に違います。仲道さんのコンサートでの表情を見ると、まるでショパンが降臨しているかのような、自信と安らぎと、恍惚感に満ち溢れていました。
Commented by noanoa1970 at 2010-07-04 16:56
こぶちゃん さん
ショパン当時のピアノで、しかもほとんどがオリジナルのままということでしたから、いかにに調整しても、やはり音程のズレが生じるのでしょう。特に和音が醜くなりがちですね。
小生もこのことには気づいていました。
ただサンプルとしてリンクしておいたピリオド楽器でのショパンのノクターンでは、かなり改善されており、近代ピアノに近い音が鳴っているように思われます。そちらも参考にしてください。
Commented by k_hankichi at 2010-07-20 23:54
審美眼。感銘しました。楽器の差異は、たしかに如実にわかる気もします。いろいろな、世代の、ピアノを聴いてみたいです。
Commented by noanoa1970 at 2010-07-24 06:19
k_hankichi様
楽器そしてホールと作曲家の関係を見ることも面白いと思います。
また楽器そのものの変遷と、その楽器の音色、音量など、興味は尽きません。
ピアノは調律によって音色が変化するようなので、ピアニストには、よい調律師が必要なのですね。
そうはいってもその楽器固有の響きや音色は失われないはずですから、違いを確認することは、非常に面白いと思います。ただ国内の演奏で使われるのは、約9割がスタインウエイで、これは残念なことです。