河島英五セルフ&カヴァー

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大学時代のサークル、DRACの友人からCDが届いた。
彼のプロデュースということだ。

彼はSONYレコードに現在勤めていて、以前にも、彼の手がけたCDを聞かせておらったことがあった。

その時は、多くのレコード会社のプロデュースと同じような、「~ベスト」とか、「青春のポップス」のたぐいの、70年代80年代にレコード盤にて発売されたものを、寄せ集めてCDにしたものだったから、製作者の意図が、「手軽に聞ける」という以外には、これと言って思い当たるものがなく、それなら、今ではYOUTUBEあたりで、十分賄いがつくのでは・・などと思ってしまっていた。

しかし昨日届けられたCDは、そのタイトルが示す通り、河島が自ら歌ったものと、同曲をほかのアーティストが歌ったものを合わせて収録したアルバムである。

コンセプトはおそらく、河島英五トリビュートであると思われるが、本人オリジナルを加えた点が、従来のトリビュート作品とは決定的に異なっている。

こういうコンセプトCDで面白いことは、オリジナルが持つ普遍的な価値、そしてそこから湧き出てくる、いわば琴線に触れることが可能な瞬間が味わえることと、同時に、河島をトリビュートする歌い手たちが自ら、琴線に触れることで得られたその歌唱を、我々に、間接的かつ、有機的に伝えてくれることである。

二重の喜びと感動を我々に伝えてくれるというわけだ。

その意味で、このCD作品はかつてないほどの優秀企画であるといえる。

トリビュートしている面々は、ショウケン、ジュリー、堀内孝雄、小柳ルミ子、あのねのね、加藤登紀子、ちあきなおみ、矢代亜紀、三代目魚武濱田成夫、桑名正博、やしきたかじん、森田公一、中村雅俊、そして河嶋の残した子供たちである。

小生は個人的な趣味で、クラシック音楽を愛好している。
クラシック音楽の世界では同曲異演は、当たり前であり、「解釈」と言われるような、ごく些細な表現の変化を見出すことも楽しみの一つだ。

しかし非クラシックの世界では、同様のことがものすごく大きな表現の変化となって表れることが多い。

オリジナルから大きく逸脱してしまうものも少なくないが、このCDに収録されたそれぞれの歌い手は、編曲:アレンジこそかなり違うとはいえ、いずれもが河島をトリビュートし、そして河嶋の詩とメロディーとその奥にある何かを、強く表現していて、「彼らの表現による河島感」が、我々にかなりストレートに伝わってくる。

たとえば、沢田研二が歌う「いくつかの場面」の後半終了間際には、沢田が一瞬、感涙にむせぶような声を発しているかのように聞こえ、沢田の歌唱もさることながら、沢田を通して、河島の音楽的、いや「それ以上のなにか」という琴線に触れることができた。

本CDに収録された曲では、このような・・・一気に2枚のCDを通して聴いたが、思わず目頭が熱くなる瞬間が数回あったことを付け加えておく。

収録されたSONY以外のレコード会社所属のアーティストたちの、版権に絡む諸問題を、きりぬけて、このようなコンセプトアルバムを完成したことは、非常に素晴らしいことであり、こういうアルバムを制作し続けていくことが、現在のCD供給側の問題を解決してゆく1歩となることを、切に希望するものである。

このCDには、未発表音源「鰻谷」が収録されていて、これらの発掘や発売許可などなど、制作にあたり、社内外の交渉事も多かったと予見される。

友人によれば、
「カバーアーティストの所属レコード会社や事務所の許諾をとるのに時間がかかった。
何度も奈良(河島英五の奥さんがやっているカフェTEN.TEN.CAFEでいつも打ち合わせします。)に行き、相談したりして制作した企画です。一年かけてやっと完成しました。」
制作に1年・・・ベスト盤などはおそらく数か月で済むと思うから、かなりの労力を費やしたのだろうが、それだけにとても素晴らしいアルバムに仕上がった。

ブックレットも従来のものとは一線を画し、曲ごとに、河島の元マネージャー原久尚氏が、河島のエピソードや楽曲にまつわる知られざる情報を語っている点も見逃せない。

こういうアルバムが出せるということは、CD業界も捨てたものではなく、希望が見え隠れするようだ。

久々によいアルバムに巡り合うことができた。

Sony music 2010/05/19発売
通常価格¥3,200(税込)
CD/GT music/MHCL-1750

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by noanoa1970 | 2010-06-12 12:48 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(6)

Commented by drac-ob at 2010-06-12 19:09 x
カバーしているミュージシャンに関連性が薄くて、それがまた、このミュージシャンの素晴らしさを表しているような気がします。ご指摘の通り、安易なベスト盤(某TSUT●YAなど)が多くて、しかもそういうものを聞いてそのミュージシャンの音楽を分かったような振りをする人間が多すぎるような気がします。
Commented by noanoa1970 at 2010-06-13 06:30
そうです・・・・
単独では、決して聞かないような歌い手たちが、結構いい味出してます。もとがストレートな詩とメロディーですから、編曲カバーの、変化がとても楽しめます。
他メーカーの版を横断してのアルバムは、我が国では快挙でしょう。
Commented by RelaxAndGo at 2010-06-18 19:03
「いくつかの場面」は名曲ですねえ。いろいろと聞く者に記憶を呼び起こさせる曲想ゆたかな歌になっていると思います。あれは「カバー」というのは正確ではなくって河島英五自身がそれをセルフカバーするより以前に沢田研二に楽曲提供されたものでした。noanoa1970さんの推察されるように普通の安直なコンピレーションものとは違った手の込んだ時間のじっくりかかって練られた企画だと思います。
Commented by noanoa1970 at 2010-06-20 10:58
RelaxAndGoさん
ありがとうございます。友人になり替わりまして御礼申し上げます。いくつかの大手レコード会社にまたがる音源を収録したことは、業界でも快挙と言っていいのではないでしょうか。これも時代の流れかもしれませんね。
Commented by micarin at 2010-06-24 19:18 x
はじめまして。
drac-obさんのマイミクのミカリンと申します。
面白い日記を拝見させていただきました!
私もクラッシック畑が大好きです!
もちろん、酒も男もだいすきです。
呑むのも呑まれるのもすきです。
またおじゃまします。失礼いたしました~
Commented by noanoa1970 at 2010-06-25 09:09
micarin さん
訪問そしてコメントありがとうございます。
歌える看護師が目標だとか。
看護師という職業は、もっと評価されていいと、常々思っている次第です。しんどい仕事かと思いますが、是非頑張ってください。