「新世界」超レア音源を聴く

小生のお気に入りの指揮者の筆頭が、「フランツ・コンヴィチュニー」である。
彼は61歳と若くして亡くなってしまったことと、大戦後の東ドイツを拠点として、60年代までを過ごしたから、その活発な音楽活動に比べて、残された音源は多くはない。

しかし最近では過去の歴史的音源の発掘、そして復刻CD化という、うれしいことも多くなってきたようだ。

幻となっていた、1961年日本公演のゲヴァントハウス管弦楽団とのベートーヴェンの9番の交響曲が復刻されたし、長い間待ち望んでいたバンベルク交響楽団との「新世界」も、ごく最近リマスターリング再復刻された。

現在可能性がありそうなのは、ラジオ放送もされた、日本公演のベートーヴェンチクルスであろうが、第9発売以外にはまだ音沙汰がないようだ。

コンヴィチュニーのCDは、ごくまれにしか発売されないので、小生は数カ月ごとに、大手CDショップの検索サイトで確認することにしているが、たまに見逃すことがあった。

月が変わり6月になって、まさかとは思いながら、検索をかけて調べると、目に飛び込んだのが「新世界」。

少し前に発売の、バンベルク交響楽団との演奏の焼き直しだろうと思ったが、よくよく見ると、仰天するようなことが分かった。

其れは今まで存在しないと思われていた、新世界のライブ録音で、しかもオケがシュターツツカペレ・ドレスデンというものだった。

1959年ウイーンでのライブ録音だそうだ。

61年エテルナに録音した、バンベルク交響楽団の演奏がとても素晴らしかったから、コンヴィチュニーがドイツの伝統オケを率いて、はたしてどのような新世界を聴かせてくれるのか、そしてライブというのも非常に興味深いことであった。

今までの経験からすると、コンヴィチュニーという指揮者は、ライブでやはり最も威力を発揮しているように思えたからだ。

さてCDが到着してから3回あまり聞いてみた感想は。

これは鮮烈な演奏である。
熱血のコンヴィチュニーといえるほど、ほとばしる情熱にあふれている。
フリッチャイ/RIASの素晴らしい演奏に勝るとも劣らない。

バンベルク響との演奏では、かなりテンポを揺らしていたし、のびやかに歌うところも多く見受けられたが、このSKDとのライブでは、インテンポのままひたすら突き進む印象だ。

ただしコーダ部分ではコンヴィチュニー節の特徴の1つでもある、リタルランドして、大見えを切る場面も見受けられる。

ほとんど、いつもかなり忠実な演奏をするコンヴィチュニーだが、バンベルク響との演奏で見せたようなダルセーニュは、今も演奏では採用していない。

そんなこともあって、遊んでいる暇と余裕のないままに・・・かといって演奏が画一的でつまらないことは一切なく、音楽がしっかりしていてより構築的だ。

1楽章時の・・・多分チューニングの成果が、気温や湿度の環境の変化でおもわしくなく、弦楽器に微妙なズレがあるが、2楽章入りの前の再チューニングによって、其れがまったくなくなって、SKDの弦アンサンブルの匠が聞こえてくる。

例のイングリッシュホルンは、ややぶっきらぼうだが、弦パートの素晴らしさはよく体感でき、思わず聞き入ってしまうほど。

3楽章は確固としたリズムに支えられ、かなり細かい表情まで表現していて、各パートの普段はあまり聞こえてこないような音まで導き出している。

4楽章の特徴は、冒頭の管楽器のトランペットのオクターブ上げを実施していないのはなぜだろうか、理由はわからないが、楽譜の版の違いなのかもしれない。

長い曲だけに、中には聴いている最中に、聴きダレを起こしてしまう演奏も多い中、コンヴィチュニーの新世界は、バンベルク響のものとともに、一気に聴きあげられる演奏だ。

クラシック音楽を聴き始めて約50年。
コンヴィチュニーの新世界が、別バージョン、しかもSKDとの演奏があるなんて言うことは、想像だにできないことだったし、これまでそんな情報も一切皆無であった。

コンヴィチュニーは短命だったし、東ドイツでの存命中は、LP初期時代でテコーディングもままならない状況であった。

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1960年になって漸く、ステレオ録音もあるが、其れはごく少ない。

しかし今この時代にこのような音源が発見され、復刻の憂き目をみることができるということは、今後さらに新しい音源が発見され復刻される可能性もある。

日本公演のベートーヴェン全集は、どこかにテープが残っているものと推測できる。
一昨年にはこの中から第9が復刻発売されたから、ソ連によって押収された音源とともに、いずれかには復刻されることを期待するものである。

モノラルだし、ところどころに瑕疵も散見されるから、お勧めはしないが、コンヴィチュニーに興味ある人は、泣いて喜ぶだろう。

ほとんど同時に、今や幻となっていた、コヴェントガーデンの「ニーベルンクの指輪」から「ワルキューレ」が復刻されたから、これも是非入手したい。(海賊版で小生は、ラインの黄金を持っている)
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by noanoa1970 | 2010-06-06 15:46 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)