ベト7妄想視聴

先日の病院の待合室でのことだった。
かなり大きめの音量で鳴らされた着信音は、ベートーヴェンの交響曲7番1楽章の第1主題であった。

いったい何者がベートーヴェンなどを着信音に指定いるかと、その音の主を探すと、其れは実に失礼だが、およそクラシックと縁遠い風体の、70歳ぐらいの老人だった。

概観で判断してはいけないことはわかっているし、小生も逆の立場だったら、そう見られるかも知れない予測はつくから、・・・そう思う反面、どうしても不釣り合いな着メロに、きっと「のだめ」の影響で、その老人の子供か孫が着信音にしたのだろうと、いらぬ推測をしてしまったことがあった。

何を隠そう、今の小生の着信音は、まさしくベト7だ。
もし他人がこれを聞きつければ、きっと同じように思われるのであろう。

さて連休2日間で、ベト7(略したくはないが、便宜上こうして記述する)を20数曲聞いた。
これだけ聞くとさすがに飽きてくるのだが、それでもこの曲は飽きるまでに相当長い時間を要す曲だ。
言い換えればそれだけ曲自体が素晴らしいということになる。

この曲従来から、舞踏の神化とかリズムの権化と称され、とかくそのリズム缶が強調されてきた。
確かにそういう面はあるし、其れがこの曲の真骨頂ではあるが、多くの演奏を集中して聞いたことで、其れに是非付け加えねばならないことが見えてきたようだ。

それは一言ででいえば、対話と・・・誰かの言葉を無理に使えば、「対話と圧力」の音楽と言えるのではないか。

言い換えると、今まで理解できずにいた人同士が、いろいろな軋轢を乗り越えて、お互いを理解しようと心を開いて対話、あるいは会話するさま。

心を開いた暁には、丁々発止とばかり、打てば響くような掛け合いの妙に居間で発展する。

長い長い序奏部には、2つの主題があって、さらに進みソナタ形式の2つの主題が現れるから、主題が3つも4つもあるように聞こえて、最初は戸惑ったこともあったが、漸くわかったような気がする。

さて、この「対話」あるいは「掛け合いの妙」をいかに表現するか・・・そのことが今回たくさんの演奏を聴いての1つのメジャメントになった。

ダイナミュークやリズム処理などはもちろんだが、ここに焦点を当てると、今までよいと思ってきた演奏に加えて、新たに素晴らしい演奏が見つかった。

ミュンシュ/ボストン交響楽団1956
カラヤン/フィルハーモニア管弦楽団1952

以上の演奏を、今までよしとしてきた
カラヤン/VPO1958
ミュンシュ/パリ管弦楽団1967
コンヴィチュニー/LGO
ドホナーニ/クリヴランド管弦楽団
トスカニーニ/フィルハーモニア管弦楽団
クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

これらに加えることにした。

特にカラヤンは新旧5種類ほど聞いたが、どれもメジャメントの1楽章第1主題が提示される直前。
フルートと弦楽器の呼応、対話、会話のさせ方が実に上手である。

あのフルヴェンでも、ここは全くダメで、口ごもってばかり、何を表現したかったのかが、全くわからない。

ミュンシュはこの曲が得意だったのか、新旧ともに白熱した演奏だ。
カラヤン/フィルハーモニー管弦楽団では終楽章のホルンはデニスブレインだろうか、実に朗々としたコラールを聴かせてくれた。
そして掛け合いの妙を誰よりもうまく表現しているのが、やはりカラヤンということになる。
例の部分・・フルートと弦パートの会話なんぞは、素晴らしすぎて涙腺が緩んでしまう。

低弦のゴリゴリ感ももっともよく表しているのがカラヤン盤だ。
そしてカラヤンは若い時のほうが、より素晴らしいのではなかろうか。

リピートがいずれも欠如していることを除けばカラヤンが素晴らしい。

フィルハーモニア管弦楽団がランクされたのは偶然であろうか。
再評価せねばならない管弦楽団ではあるようだ。

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by noanoa1970 | 2010-05-04 17:01 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(2)

Commented by HABABI at 2010-05-06 21:45 x
こんばんは
ベートーヴェンの交響曲第3番と第7番は、その最初の1音にとても大きな意味を期待します。第3番の場合には強い凝縮力を、第7番の場合にはまるで宇宙を一周して来るかのような開放感を小生は期待して聴きます。そのような音を出しているのは、第3番ではライナー指揮シカゴ交響楽団、第7番では未だ見つかりませんが、ちょっと広がってすぐ戻ってくる感触は、アバドが1970年代前半にウィーンフィルと録音したものからでも感じ取れます。「対話」あるいは「掛け合いの妙」に関しては、これから意識して聴いてみることにします。
Commented by noanoa1970 at 2010-05-13 09:36
お返事遅くなりました。
アバド盤は聞いた中に入っていますが、小生にはピンとこなかったようで・・・なぜかわかりませんが、どうもアバドは性に合わないようです。(楽譜の版が違うせいかもしれません?)
対話や掛け合い感が比較的よく出たものには、両翼配置のVPO/カルロスクライバーがあります。
これも白熱した、よい演奏と思います。
ライナーは、比較的派手な曲しか聞いてきませんでしたが、最近ブラームスを聞いて、かなり興味がわいております。
今度3番聞いてみます。