キリストの幼時からCoventry Carol へ

今年はベルリオーズの「キリストの幼時」を、クリスマスに聴く曲とした。
このオラトリオの題材は、古代ユダヤのヘロデという王が、救世主キリストの誕生を恐れ、国内の2歳児以下の幼児を全て虐殺したという、旧約聖書の中の話によるもの。

キリストとその両親は、このことを察知し、エジプトに逃れたというから、もしヘロデに虐殺されていたならば、今のキリスト教は存在しないことにおなる。

したがって、キリスト教にとっては重要な逸話であり、この時運悪く虐殺の対象となった幼児は全て聖人とされるほどである。

クリスマスに相応しいか否かはさておき、広い意味での宗教的雰囲気を持つ曲は、どれを聴いても似合っているように、小生は思っている。

かつてはM・Aシャルパンティエの「真夜中のミサ」が、そして最近ではヘクトル・ザズーの「light in the dark」がお気に入りだったし、フランスのキャロルもその中に入っていた。

ベルリオーズという人の作品は、小生はあまり好んで聴くことはないのだが、この「キリストの幼時」は昔からとても気になる存在で、本日聴けたことは誠に喜ばしいことだ。

ベルリオーズにおける宗教性は、卑近なところでは「幻想交響曲」中の、「神の怒りの日」の引用であろうが、他の作品には小生の知る限り・・・「レクイエム」を除き、あまり見受けられないと思う。・・・いや、近年になってから初演された「荘厳ミサ」があるが。

ベルリオーズがなぜこの題材を選択したのかを、今知ることはかなわないが、そのヒントの1つとなりそうなものを発見した。

それが16世紀イギリスの古いクリスマスキャロル:コヴェントリー・キャロル :Coventry Carolである。

この中で歌われる内容が、まさに「キリストの幼時」と同じ題材から取られているのだ。

虐殺の悲劇とキリストのエジプト逃避行を歌ったものが、クリスマスキャロルとして歌われるほど、聖書の中の逸話の中でも、特に世の人々に受け入れられてきたのであろう。

ウイキペディアに邦訳が記載されていたので、拝借した。
下記の内容である。

おやすみ、おまえみどりごよ、
ねんね、ねんね、おやすみよ。
おやすみ、おまえみどりごよ、
ねんね、ねんね、おやすみよ。

あねさまいもうと、どうしたら、
この一日を守れるの。
わたしら歌ってきかせてる、
あわれなこの子を守れるの。

王様ヘロデは恐ろしい、
今日命じたの強い兵隊に、
『目に入るなべての子供をば
切り捨て果てよ』と声高に。

わたしはおまえみどりごを、
思って朝からおののくよ。
歌わず喋らず別れましょう、
ねんね、ねんね、おやすみよ。

小生はこのイギリスのキャオルが、海を渡ってヨーロッパ大陸にやってきた、あるいはこれは大胆な推理だが、もともとフランスのキャロルであったのかもしれない。

そして多分ベルリオーズは、このキャロルをどこかで耳にし、その音楽的内容と詩の内容から、興味を持ったのではないか。
また新約聖書の中のマタイ伝に出てくる物語を扱った、『刈り込み人と仕立て屋の芝居』 という劇の中で歌われたというから、この劇を観た可能性も否定できない。

ちなみに「ルーベンス」は、なんども「幼時虐殺」についての絵を描いているから、ベルリオーズがそれを観たという可能性も・・・・

そうしたオリジナルキャロルや絵画に触発された原体験が、「キリストの幼時」制作の原点の1つであった、そう考えてもおかしくはない。

ケンブリッジシンガーズが歌う、とても美しいものがあったのでdぷぞ聴いてください。
クリスマスにピッタリだと思う。

Coventry Carol - The Cambridge Singers


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by noanoa1970 | 2009-12-24 15:43 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)