ピエール・デルヴォーの「イタリア」交響曲

以前のブログで、小生は「ピエール・デルヴォーのボレロ」という記事を書いた。

デルヴォーは、通常ならばフランスのオーケストラを指揮した、サン=サーンスや、フランス近代音楽を得意とする指揮者として知られているが、小生はそれらより、1960年代初めに彼がドイツの、しかもハンブルグ国立フィルハーモニー管弦楽団を指揮したフランス近代音楽を聴いてきた。

そのことを書いたブログの中で、メンデルスゾーンの4番「イタリア」交響曲の初聴きは、デルヴォーとハンブルグの組み合わせのもので、遠い過去の記憶で、「厳かしいイタリア」という印象であるとした。

初めて聴いた「イタリア」から約50年。
その時と同じ音源の録音が、CD覆刻されることとなり、懐かしさも手伝って入手した。
コロムビアオイロディオスクヴィンテージコレクションからの1枚、オペラ原盤である。

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それで今朝はこのCDを取り出し聴いてみることにした。

CDで聴いてみると、先のブログに書いた印象とは全く異なることに気付き、訂正の意味でも、改めて記事をUPしなければならないことが判明し、今こうして書いている。

「暗くて厳しいイタリア」・・・・それはとんでもない思い違いで、多分ドイツハンブルグのオケということから、そう思い込んでいたものと思われる。

当時のLPは手元から消えてしまっていたので、確認しないままの印象で記事に盛り込んだことをお詫びしなければならない。

「流麗で洒脱なイタリアで、しかも陰陽のグラデーションに優でた演奏」ともいうべきもので、北ドイツの・・・・いままで聴いてきたカイルベルト、ヴァント、レオポルド・ルドルートビッヒのベートーヴェンやブラームスから想像されるような、暗めのトーンの厳しさを主に置いた音楽ではなく、名前を伏せて聴いたとしたら、決してドイツのオケだとは思えないような音を引き出している。

もっともメンデルスゾーンは、ユダヤ系ドイツ人だから、「イタリア」といえど、明るい能天気だけの音楽ではないのは確かだが、それでも彼の交響曲中、最もアグレッシヴな音楽ではある。

しかし、「スコットランド」でも使われた、「旋法によるモチーフ」を2楽章に入れ込んだことから見れば、地中海の青い海と明るい太陽の日差しは、メンデルスゾーンの日常からは程遠い、まさに夢物語であったのかもしれないし、はるか古の古代ギリシャやローマがしのばれ、明るさの裏返しが見えてきそうな感じがしないわけでもない。

時折顔をのぞかせる暗く沈むようなトーンは、「ふと我に帰ったメンデルスゾーン」が見えてくるようで、この曲を、希望に満ちた明るい曲とだけする風潮には、小生はくみしない。

デルヴォーは、録音のせいかもしれないが、ハンブルグの弦パートをこれでもかというぐらいに、明るいトーンで弾かせているように思われる。

それに対し管楽器のトーンは、全体的に暗いイメージで、デルヴォーはわざとこのようなオケ内対比を作りだしたのかもしれない。

アンバランスなようだが、このことがデウヴォーの「イタリア」の特徴であり、原点だろう。

メンデルスゾーンの特徴の1つでもある弦の刻みは、今まで聴いてきた演奏のそれと比較しても、際立って明るく感じられるが、そのことが全体の印象を決定づけてしまうところがあるから、騙されないようにしなければ、この演奏の本筋を見失う。

明暗そして陰陽をはっきりさせた演奏は多いが、デルヴォーの演奏はリニアーなグラデーションを付けたものとなっていて、急激な変化を決して見せない。

やや緩やかテンポと相まって、このことが一層特徴的だ。

このような「イタリア」、あまりお目にかかったことが無いから、貴重な録音であるし、CD化されたのは世界初のことだ。

こういう「イタリア」も悪くない。

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by noanoa1970 | 2009-10-13 11:27 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(4)

Commented by aosta at 2009-10-13 14:09 x
ご無沙汰しています。その後指の調子はいかがですか?
先週から勤め先のイベントが続き、連休はずっと開館でしたのでお休みもありませんでした。
この曲は私が初めて聞いたメンデルスゾーンの交響曲ですが、もう長いこと聞いていませんでした。
noanoaさんがお書きになっていらっしゃるデルヴォーはまだ聞いたことがございません。
弦と管の明暗を感じさせる対比・・・
一体どんな演奏なのか気になるところです。
Commented by aosta at 2009-10-13 14:10 x
noanoaさん

続きです。
ゲーテの時代からアルプスの南イタリアは、北ヨーロッパの陰鬱な冬を知るものにとっての憧れの地でしたね。太陽の恵みにあふれた明るく輝かしいイタリア、と言うだけでなく、ルネッサンス以来のギリシャ・ローマへの尽きぬ憧れもまた、更なる想いへと駆り立てる要因の一つであったことでしょう。
メンデルスゾーンの「イタリア」は、流麗で美しい旋律が魅力ですが、おっしゃられるように軽く調子の良いだけの音楽とも思われません。第一楽章の明るく晴れやかな気分が好きですが、確かにそれだけでなく、眩しい日差しの下から、木陰に入った時の一転した暗さ。網膜にはまだ陽の名残りが残像として残っているにも関わらず、光と影とのコントラストに一種の戸惑いを感じる一瞬のためらいの気配のようなものが、遠くから聴こえてくるような気がしました。
あいまいな記憶の中だけの「イタリア」ではなく、もう一度聞きなおしてみてから改めてお邪魔させていただきます。
Commented by noanoa1970 at 2009-10-13 16:27
aostaさん、コメントありがとうございます。
先のスコットランドでもそうでしたが、オラトリオ「聖パウロ」、「エリア」、未完の「キリスト」と続くテーマ、そしてカンタータ「最初のワルプルギスの夜」、詩篇には、ユダヤの影が色濃く出ていて、意識的に離脱しようとするが、どうしてもしきれないところの、葛藤が見え隠れするようです。そんなところからも、メンデルスゾーンの音楽の陰陽の源があると、小生は思っています。ニ短調のバイオリン協奏曲には、ユダヤ民謡らしきフレーズを忍ばせていますし、弦楽四重奏曲第1番変ホ長調、第2楽章「カンツォネッタ」にも使っていて、中期までの作品には、ユダヤの影が相当に色濃く出ているように思います。「転向」「改宗」という負の遺産を、メンデルスゾーンは常に引きずっているようで、「明るさの中の暗さ」はいつも見え隠れします。
Commented by noanoa1970 at 2009-10-13 16:39
御心配頂いた右手指のしびれは、相変わらずで、少しひどくなったようです。来週整形外科にかかりますが、どうなることやら・・・・
マウスとキーボード禁止となると、かなり辛いところです。
今はサポーターをして、パソコンに向かっています。